スペインの商店

 

PUENTEFUENTE 2006年9月

 

     第一日曜日に開ける大手スーパー・マーケットがあるけれど、日曜日はほとんどの商店は閉まっている。アラブ人や中国人経営の店は、日曜日も開いてるものの、午前中に開いてる店は、キオスコとバルとパン屋ぐらいのものだし、午後になると開けないバルもある。基本的に日曜日はみんなの休日の日と言う観念からなのだろう。日曜日の散歩と言うものは、他の曜日とは違っている。車も少ないし、断然すれ違う人の表情がくつろいでいて違うのだ。

      スペインの商店には、お昼休みがある。だいたい午前中9時から午後2時まで、午後は5時から夜8時まで開いている。夏の暑い時期には、午後は5時半から8時半と言う具合に開店時間をずらすこともある。

     新鮮な肉・魚や野菜が買えるといった理由で、いつも伝統的なメルカードの近くに住みたいと思っている。メルカードとは、各地区の商店街の一角の屋内に、いくつもの個人店舗が集合したもので、八百屋、肉屋、魚屋が主ではあるけれど、バルがあったり、花屋、パン屋、小物装飾店、菓子店、チーズ・腸詰専門店などもある。メルカードは活気に満ちている。数多くある店の中、順番を待っている人の数の多いところを覗いて見ると、目玉商品の安売りの魚があるのがわかったりする。マドリードの中でも大きくて有名なのは、クワトロ・カミーノスの近くにあるメルカードだ。このメルカードで特に多い店舗は八百屋と魚屋で、珍しい魚が豊富にある。又グラン・ビアの三越の裏にあるメルカードには、中国や南米原産の野菜を扱っている店があり、にらや大根なども手軽に買える。

     スーパー・マーケットと小売店での違いと言うのは、列を作るか作らないかと言うことだ。小売店に入ると、必ずと言って買う順番を聞かなければならない。そうして、次の人が来店して順番を聞いてきたときには、私の次ですよ、と挨拶した後一列には絶対並ばない。だから前の順番の人と、後ろの人の顔を覚えておかないと、後で順番で私が先だあなたは後だ、と喧嘩になったときにややこしいことになる。ありそうでないことのようだけれど、この順番の口喧嘩はすさまじく、スーパー・マーケットの中にある肉・魚店や、籠を持って並ぶキャッシャーの列でも中はいりをする人がいるので、よく見られる光景だ。よくスペイン人は日本人はみんな同じ顔に見えると言うけれど、私も実はスペイン人はみんな同じ顔に見えることが良くある。パーティなどで知り合っても、よく話をしない人の顔というのは記憶に残らないからかもしれない。そんなわけで、この順番待ちでも顔の他に洋服の色のチェックをするのが常だ。客入りの多い小売店では、順番待ちの番号札を備え付けている。

     スペインに来た当初は、よくエル・コルテ・イングレス百貨店のスーパー・マーケットに行ったものだ。近所のハム・ソーセージを扱っている店にはない腸詰ソーセージを買えたり、日本のスーパーと同じくらいの豊富な品揃えと、ほとんど会話なしに買い物できることが便利だったためだろう。他の小売店と比べるとお昼休みも開いているし、夜10時まで開いてるのも、働く人にとっては便利である。大学のクラスが夜9時まであったころには、毎日のようにアルグエジェスのエル・コルテに寄ったものだがそれを知ったクラスメートは他のスーパーのほうが断然安いと言い出した。その時にスペインでは店によって同じ商品でも値段がかなり違ってくると言うことに気がついた。それは一円二円の差ではなく、少なくとも一点につき二十五円、大きいときなどは百円単位に違いが出てくる商品もある。その他、どうやらエル・コルテ・イングレスのスーパーで買い物する人は、リッチと言う社会的ステータスもあるようなのだ。以前誰かがエル・コルテ・イングレスは、イギリスのハロッズに匹敵するような高級品嗜好のデパートだと言ったのを聞いたけれど、ハロッズのように高級品嗜好もあるけれど、一般大衆好みの域を超えていないところや、とにかくありとあらゆる商品を扱っているところが、現在ヨーロッパの百貨店の中でも売り上げ高の上位を占めるところなのだろう。エル・コルテ・イングレスは、ポルトガルに2店舗ある以外には、スペイン国内だけに店舗があるのだが、競争相手の百貨店だったガレリアス・プレシアドスの買収と、近年撤回したイギリスのマークス & スペンサーの建物のをそのまま買い上げたことで、どこに行ってもエル・コルテ・イングレスがあるような印象を受ける。その売り上げが前年よりも8.5%の伸びを示して、年間158億5千万ユーロの売り上げたと言うのは、つまりそのほとんどはスペインに住んでいる人が買っているということだ。その他、エル・コルテ・イングレス・グループには、24時間営業のコンビニのようなオープンコルOPENCOR、食料品販売のイーペルコルHIPERCORとスーペルコルSUPERCOR、旅行会社、SFERAというマンゴやザラに対抗する洋服ブランド、眼鏡店OPTICA2000、さらに日曜大工のBRICORという店も開店するという。

     と言うわけで王者エル・コルテ・イングレスと、大手スーパー・マーケット同士の激しい資本主義過当競争の中、年々家族経営の商店は減ってきている。また都市開発にともなう地価高騰にも関係がないわけではない。以前には、うちの近所に間口一軒の入り口のボデガと呼ばれる、大きな樽から小さなコップにワインをサービスするのみの店が二件あったが、消えてしまった。薬剤店や金物屋といった小売店も、質は悪いが安くて何でも揃っている100円ショップの波に押されてしまった感もある。どこに行っても同じ店があるなんて、散歩しててもやはり情緒がないと思うのだ。

 

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