PUENTEFUENTE 20042

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スペイン人の名前

 

 

     日本人とスペイン人ではどちらがたくさん名前を持っているでしょうか。日本語の漢字による名前の違いの故に、日本人の名前の種類の数はスペイン人の名に対しては遥かに上回ることでしょう。それでも日本人口1億2千万に対して、スペイン人口は約その三分の一の、四千万人ですから人口の比によればどちらが同じ氏名を共通する割合が多いかと言うことを調べられる可能性があります。でも今回は別の観点から話を進めてみたいと思います。

 

スペイン人の二つの苗字

      スペイン人は二つ苗字を持っています。例えば私の友人のローラ・ロドリーゲス・ペレスさんの名前を例にして見ます。ローラは名前です。ロドリーゲスは第一苗字で父親の第一苗字を最初につけます。第二苗字は母方の第一苗字ペレスです。スペイン女性は結婚しても夫の苗字に変えることがなく、ずっと生まれた時から同じ名前苗字で過ごします。子供が成人となった際にこの苗字の順番を変えることが出来るそうです。でも殆どの人は父苗字・母苗字の順で一生を過ごす人が殆どだそうです。結婚しても戸籍上で苗字を変える習慣がないとはいえ、よく聞こえてくるのは奥方に「ヘルナンデス夫人」SEÑORA HERNANDEZ とご主人の苗字で呼んでいることです。

スペイン人の名前の由来

      このページの 『東方の三博士』 の中でスペイン人の9割はカトリック教徒であることを書きましたが、カトリック教徒は子供が生まれるとほぼローマ・カトリック教会公認の聖人の名前をつけるのが常です。その数は定かではありませんが日本のように漢字で名前の違いを確認するといったことは出来ないので日本人の名前の数よりずっと少ないのは確かです。そんな訳で、同じクラスに同じ名前のクラスメートがいることが多いです。例えば二人のミリアンちゃんがいる場合はミリアン・ロドリーゲス、ミリアン・マルケスなどと苗字をつけて呼んだりします。その他、カトリック教聖人以外の名前もあります。宝石の名前から取ったエスメラルダ(エスメラルド)、有名人からの名ケヴィンやリサ、お花の名前のロサ(ローズ薔薇)、マルガリータ(マーガレット)、オルテンシア(紫陽花)、暦の月の名前フリオや、ギリシャ・ローマ神話からディアナ(ダイアナ)、またはゼウス、ウーリセス(ユリシーズ)などです。

父から息子に、母から娘に受け継がれる名前

      スペインでは長男が生まれると父親の名前をつけ、長女が生まれると母親の名をつける家庭が多く、電話をかける時などはよくぺぺ・パドレ(父親の方のぺぺ)などといったりするのをよく聞きます。そういえば、現ジョージ・W・ブッシュ米大統領も父親と同じ名前ですね。ダブリューの約された名前はWalkerだそうです。そういえば何年か前に小型飛行機事故で亡くなったJFKの息子はジュニアと言われていました。 私の友達の家族は大所帯でお父様、お母様は9人の子供たちをもうけ、それぞれに所帯を持ち38人の孫と家族が膨れ上がりました。子供たちは結婚を機にそれぞれに独立し、父上と母上だけで暮らしていますが、毎週土曜日には家族が集まってにぎやかな食事になるそうです。御父様はフェルミンといい、長男はフェルミン、その息子さんもフェルミンなんだそうです。で、何代のフェルミン・ガルシアが続いているのかと聞いたら八代だそうです。娘の場合はだいたいにおいて第二苗字をつけることから、ローラ・ロドリーゲスが結婚しても娘のローラは父方の苗字をつけるわけですから、ローラ・ロドリーゲスが、ロドリーゲスという苗字を持つ人と結婚しない限り、娘はロドリーゲスという苗字をその次の世代には継げることはありませんね。ウーマン・リブ運動のあったスペインでも、まだまだ男性社会の強い風潮で、成人を迎えた女の子が母親の苗字を第一苗字に変えるなどということを聞いたことがありません、とはいえそれがウーマン・リブをしめすとはいえませんが。ちなみに日本の男尊女卑の文化は国際的に有名なことですが、地中海沿いの国々に漏れず、スペインもかなり強く、そんな男たちを『マッチョ・イベリコ』と呼んでいます。松任谷由実さんの歌に『強がる姿が好きだから』というフレーズがありましたが、おそらく、意味としてはこの世に存在している男と女の宇宙的違いを把握した上での女の男に対する理解だと私は勝手に解釈しています。そういった訳で私はマッチョ・イベリコが単に男尊女卑思想の男たちという事ではなく、イベリア半島風土に育った男っぽい男と理解しています。話が大分ずれてしまいましたが、ガルシア家の話に戻りますが、このフェルミンという名はおそらく名前のランキングベスト10には入らないでしょう。でも、エルネスト・ヘミングウェイの小説『日は又昇る』ですっかり国際的に有名になったパンプローナの牛追い祭りで、スペインではサン・フェルミネスと複数形で呼びます。ナバラ県の首都であるパンプローナ市の守護神である聖フェルミンを讃えるお祭りです。毎年77日が聖フェルミンの日で、ガルシア家では豪華にお祝いの席を設けるそうです。聖人から名前を授かるという習慣ゆえに、スペイン人にとってはその名前の聖人の日をお誕生日と同じくらいにお祝いするのも日本では余り知られてないようです。

蛇足

      コロンビア人作家ガブリエル・ガルシア・マルケスのノーベル文学賞受賞小説『百年の孤独』には同じ名前が何度も出てきますが、それは一人の人物ではなくブエンディア家が父から子供へと名前を継いでいったからで何人も出てくるもので、私は読み始めて誰が誰なのかチンプンカンプンで戸惑い、本を読みながら紙に人物をメモってやっと理解できました。小説にはアウレリアーノが20人以上出てきます。アウレリアーノ・ブエンディア大佐は18人の其々違う母親との息子アウレリアーノ達の父でした。私の友人のお兄さんはこの父から子に名前を継ぐ習慣を重んじていて、長男にマルセリーノと名づけた後に奥さんと別れ、二番目の奥さんと男の子をもうけた際に、又マルセリーノと付けようと本気で思いました。ところが家族の大反対を受けて、弁護士まで登場して、スペインの法律では兄弟間では同じ名前をつけられないといって納得させたそうです。私の友人はこの習慣は混乱するので好きではないといっています。友人のマリちゃんも余り好きではないといっていましたが、娘のマリアちゃんの第一名前はご主人が名付け、マリちゃんはマリアちゃんの第二名前に日本の名前を花子ちゃんとつけたそうです。それでも学校ではマリアとしか呼ばれないそうです。

 

スペイン人のつける名前のベストランキング

      カルロスという名前はスペイン人がつける名前の多さのランク付けをしたら必ずトップ10に入る名前です。よくあるその他の名前は   

ホセ JOSE (英語でジョセップ),ミゲル MIGUEL (英語でマイケル)、フアン JUAN (英語ではジョン)、アントニオ ANTONIO (英語のアンソニー)、ペドロ PEDRO (英語でピーター)、パブロ PABLO (英語のポール)、エンリケ ENRIQUE (英語でヘンリー)といった男性用の名前と、マリア MARIA (メリー)、ピラール PILAR (ピラール)、アナ ANA (アンナ)、カルメン CARMEN (カルメン)、イサベルISABEL (エリザベス)マルタ MARTA などの女性用の名前といった具合です。ホセはキリストの父聖ホセから、マリアは聖母マリアから由来しているので断然トップとなるわけですね。男はホセ・マリア、女だとマリア・ホセという名前もトップに入ります。

    又歴代の王さまやお后、ローマ法王の名前も付けたい理由になるようです。JUAN,PABLO,JULIO,NICOLAS,GREGORIO,VICTOR, SERGIO,LUCIO,LEON,MARTIN,INOCENCIO,DAMASO,ESTEBAN,PIO,MARCOS,HILARIO,FELIX,MARCELO,BENEDICTO, ADRIANO, CLEMENTE, PAULOの他に MELQUIADES法王もいました。 王室の名前は、ARTURO, ENRIQUE,CARLOS,

GUILLERMO,EDUARDO,FELIPE,FERNANDO,JAIME,JORGE,JUAN,LUIS,RICARDO,RODRIGOなどが王様のなまえで、女王またはお妃の名前は ANA,BEATRIZ,CATALINA、ISABEL,JUANA,MARIA LUISA,MARIA ANTONIA,SUSANA,SOFIAなどがあげられるでしょう。

第一名前と第二名前を持つ人たち

      名前を二つ持っている人も多いです。例を出して見ましょう。女性名はマリア・デル・マル(海のマリア)、マリア・ホセ、マリア・ピラール、マリア・カルメン、マリア・ドローレス、男性名はホセ・イグナシオ、ホセ・マリア、ホセ・ルイス、フアン・パブロ、フアン・ホセ、ホセ・イグナシオ、フェルミン・ホセ...といった具合です。例えば、ネット上でカルロス・ロドリーゲスを検索した場合にはおそらくたくさんのカルロス君がリストに出て来ると思います。それでも、例えばマリア・デル・マルと名づけても実際には只マルと呼ばれている人もたくさんいます。

      スペインのエレナ皇女とクリスチ―ナ皇女の子供が生まれる度にその名前の多くて長いのに『じゅげむ・じゅげむ・ゴコウノすりきれ...』の名前を思い出しましたが、それでもテレビや週刊誌では一番最初の名前で呼んでいるようです。クリスティーナ皇女のご主人イニャキ氏はハンドボールのオリンピック・スペイン代表選手でしたが、1992年のバルセローナ・オリンピックの際にキューピットが矢を放ちました。スペイン王家では名前の後に必ず、デ・トドス・ロス・サントス(すべての聖人の)とつけるようで、初めて名前を発表された時には随分長い名だなあ、と思ったものでした。何番目かの男の子が生まれた際に、記者会見で名前を聞かれて、イニャキ・ウルダンガリン・パルマ・デ・マジョルカ公爵は「フアンだけです。」と言ったのが印象的でした。この公爵 duque、 侯爵 marques、 伯爵 conde、 子爵 visconde、 男爵 baron と言った爵位貴族称号がスペインにもありますが、イギリスでよくSirという称号を各分野面で功績を残した人へ頻繁に与えられるものと少し違っています。2002年に亡くなったノーベル文学賞作家のカミーロ・ホセ・セラ氏は1996年イリア・フラヴィア侯爵という貴族称号を受けましたが、こういうことは稀にあることです。

      この爵位貴族称号は親から子へと継げられていきますがフランシスコ・デ・ゴヤの描いたアルバ公爵夫人の子孫も同じく継承されていて、アンダルシアに広大な土地を持つ現アルバ公爵夫人は彼女の意思とは反して、彼女の家族にまつわる女性週刊誌の取材に辟易しているようです。イギリスのこういったスキャンダル好みのマスコミとは多少差がつきますが、それでも爵位称号を持つ人たちは、こういった雑誌の読者の関心が強いようで、これもヨーロッパの貴族社会の名残なのかもしれません。

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愛称

 

     アメリカ合衆国第42代目大統領だったビル・クリントンのビルという名が愛称だったとは私はつい先日まで気が付きませんでした。でも実際にウィリアムという名だとしても彼のように世界中に名の知れた人はビル・クリントンと言わなければ誰もピンと来ないくらいもう彼の呼び名がアイデンティティとなっているのですね。彼が生まれた時につけられた本名はWilliam Jefferson Blythe だったそうです。彼が生まれて4年後に母親がRoger Clinton氏と再結婚したことからビル・クリントンが15歳になった時に法律上に基づき申請して現在の名前に改名したそうです。

     私の友人ローラの名前がマリア・ドローレスというのを知ったのは大分後のことで、実にビックリしたものです。その昔西城秀樹というアイドルがローラという歌を歌っていたことで彼女の名前をすぐ覚えた私です。絵画修復理論のクラスで一緒だったローラでしたが、定期テスト結果が発表される際に、彼女に廊下に発表される試験結果リストを見てくれと頼まれた私はローラの名前を探していましたが、リストにはローラという名前がありませんでした。そこで、彼女の苗字を探すと、苗字の横にマリア・ドローレスと書かれてあり、首をかしげたものです。

     ウィリアムはスペインではギィジェルモというので、チャールズ皇太子・故ダイアナ妃の長男のことが取り出されるたびにピンと来なかったことがありました。ダイアナもディアナと呼ばれますし、ヘンリーもエンリケなので、印象が大分違います。ちなみにとあるこのページの読者の方が『レオナルドの料理手帖』の中で私がイタリア中世の花の都をフローレンスと英語読みで書いたことで、フィレンツェは何かといった質問をいただきましたが、地名をカタカナで書くのはなかなか複雑なものです。日本では各地の言語の固有名詞の呼び方を尊重してカタカナに変えるのですが、スペインでは個人名や都市名などの固有名詞をスペイン語式で呼びますので外国人には時々ピンと来ないことがあります。ちなみに英語のフローレンス、イタリア語のフィレンツェ、ですがスペインではフロレンシアといいます。ロンドンはどうでしょうか、ロンドレスです。パリはパリスと呼びます。パリからマドリードにスペイン語を習いに来たナターシャ・NATACHA・は教授たちがいつも「ナターチャ」と呼ぶのに不機嫌でした。音楽グループ「U2」の名も「ユーツー」とは呼ばずに、「ウ・ドス」(ウはUで、ドスは2のことです)とマス・メディアでは呼ばれています。ザ・ビートルズに関してはTHEと言う冠詞をスペイン語に換えて複数形固有冠詞であるLOSとつけてロス・ビートルズと呼ばれています。

画家の名前

 

       ODAという私の苗字はスペイン語にも名詞として存在していて、詩の一種でオードあるいは頌歌という神仏・君主の徳や英雄の功績なるものの賞賛歌なんだそうです。私が美術学部にいた間、いつもキャンバスの裏側に油絵の具でODAと記していました。そんなある日、いつも陽気なクラスメートのダビット君がニヤニヤしながら私に話しかけてきました。『ねえ、どうしてODAって書いてんだぁ。』 私は彼の質問の意図も解らず、 『だって私の苗字だもん。』 と素っ気無く答えましたが、なんと彼は私が冗談に書いてると思っていたのでした。又別のクラスメートのぺぺ君は(洗礼名はホセ)私の子供が画家になるとしたら、画家ネームを考える必要がない、と言いました。スペインにはODAという苗字を持つ画家はいるか居ないかというほどフルネームが共通する可能性は非常に少ないからです。

      20世紀を代表する絵画の巨匠と呼ばれるピカソの名は 『パブロ・ルイス・ピカソ』PABLO RUIZ PICASSOですが、彼はいつもパブロ・ピカソと彼の作品にサインしていました。それはルイスという父方の苗字がスペインでは余りにも多かったために、母方の余りスペインでは存在しないイタリア発祥の苗字が彼のアーティスト名には便宜が良かったからです。

      ここで3人の国際的に名の知れている現代スペイン画家の名前をあげてみましょう。アントニ・タピエス(バルセローナ1923−)、アントニオ・ロペス(トメリヨソ 1936−)、アントニオ・サウラ(ウエスカ、1930−1998)です。三人とも英語で言うアンソニーですが、タピエスはカタルーニャ人でカタルーニャ語ではアントニオをアントニとしています。前にも記したようにアントニオと言う名前はトップ10に入る共通したの名前なのですが、アントニ・タピエスの場合は余り、彼のアーティスト名にこだわる必要がありませんでしたが、もう一人のスペイン人画家アントニオ・ロペスの場合はとても複雑です。彼の本名はアントニオ・ロペス・ガルシアといいますが、彼の叔父も有名な画家でアントニオ・ロペス・トーレスといいました。ロペスという苗字はトップテンに入りますが、おまけにガルシアという苗字はまるで日本で言う田中というようなもので、同じフルネームを持つ人は沢山存在するはずです。高橋太郎という名前は日本に一体何人いるでしょうか。つまり彼は日本で言う高橋太郎氏なのです。それでも、木村太郎さんのように実績のあるひとは木村太郎というと彼の顔を思い浮かべるように、アントニオ・ロペスの場合も殆どの人はすぐにヨーロッパ式ハイパー・レアリズム絵画の彼と思うわけであります。

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