ドン・キホーテ前編刊行400年記念とラ・マンチャ地方の名物料理

セルバンテス ドン・キホーテも頬張った御馳走

Puentefuente 20053

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     「そう遥か昔むかしのことではないけれど、ラ・マンチャ地方の名前は思い出せないある処に郷士がいた...」、という書き出しで始まる世界文学不朽の名作『ドン・キホーテ』の前編は1605年1月に初版が刊行され今年は刊行400年記念の年に当たります。セルバンテスとシェークスピアの命日と重なる423日の聖ジョルディ(聖ホルへ)の日にちなんで、9年前から『ドン・キホーテ』のリレー朗読会が22日から23日にかけてマドリードのシルクーロ・デ・べジャス・アルテスで行われています。参加者は著名な作家、文化人、政治家のほか、『ドン・キホーテ』を愛する読者たちがスペイン国内、国外から集まっています。

     スペイン国内では前編の初版が発売されて直に第2版も出され、同年に第6版まで発行するほど売れまくり、スペイン人作家の本が初めて大西洋を渡って新大陸アメリカに運ばれたのも『ドン・キホーテ』でした。またヨーロッパ大陸でも絶賛され、1581年にスペインから独立したオランダでは、1607年から1670年の間に19版のドン・キホーテが刊行され、もしかしたら1609年に平戸に商館を開いたオランダ人の中にはドン・キホーテを持ってきてたかもしれないという可能性も出てきます。また1608年に初めての英語翻訳本が刊行されて以来、フランス語(1614)、イタリア語(1622)、ドイツ語...今日においては40ヶ国語以上の言語に翻訳されています。『ドン・キホーテ』は歴代不滅のベストセラー『聖書』に続いて最も読まれ・翻訳され・語られる本と言われ、文豪セルバンテスの影響力は、スペイン語圏の中南米やスペインの古今を問わない作家達に及んだのみならず、フィールディング、スモーレット、スターン、ディッケンズ、フローベル、ガルドス、トルストイ、ドフトエスキーなどの名前も挙げられています。

     この初刊が刊行された時、セルバンテスは58歳でした。そんな傑作を世に送り出し、空前の億万長者となってもおかしくはないところが、彼はいつも貧困な生活を送っていましたし、不運な出来事が次々と降りかかってはいたものの、結局のところ幸せを感じていた男だったのではないか、とドン・キホーテを読むと思えてきます。ドン・キホーテはセルバンテスではない、と言えるかもしれませんが、セルバンテスの生涯を読んでいるうちに、ドン・キホーテはセルバンテスであると思えてきます。 (puentefuente ミゲル・デ・セルバンテスの生涯)

     『ドン・キホーテ』に記述された料理に関する随筆『キホーテの料理』(セサール・フェルナンデス・デューロ著 REY LEAR1878が今年復刊されました。これを機に料理研究家ミゲル・ロペス・カスタニィエル氏によるキホーテに記述された料理のレシピーも加えられました。現在では入手不可能な材料があったり、台所の設備の違で、調理時間や器具など調理方法に多少の違いも出てきますが、セルバンテスが熱く語る料理の真髄を尊重しながらレシピーを書き上げたとフェルナンデス氏は語っています。

     1617世紀のスペインの社会は階層制で、君主を頂点とするピラミッド型で構成され、君主の次の貴族階層中、(爵位、大荘園所有騎士、裕福な騎士、郷士)最も低い位にセルバンテスは属していましたが、もっと下の階級である平民の中でもさらに低い(大商人、高級官僚、商人、手工業職人、畜殺業、悲劇役者、農村民)庶民の生活を描写していました。そうしてセルバンテスは『ドン・キホーテ』のなかで事細かくスペインの庶民の間で食された数々のご馳走を披露しています。その当時の羊飼いや馬引き、巡礼者たちは、ヤギの干し肉、羊のチーズ、味付けされたドライ・フルーツ、干しオリーブの実、生ハムの骨、ワイン用の携帯皮袋を持ち歩いていたことも解ります。白兎の肉にパン粉をまぶしたフライ、アドボ味の牛肉、ミートボール、ブラマンジェ、玉葱入りの牛ひき肉のパイ、湯で豚足、なんでもその場にあるものを入れてしまう『我愛国の腐り鍋』と呼ばれていたゴッタ鍋などが庶民のお祝いの席に並べられるご馳走でした。機知に富んだ郷士の冒険物語の主人公ドン・キホーテとその従士サンチョ・パンサが広大なるカスティージャの大地を巡り歩く間に、150以上にも及ぶメニューが登場します。それらの料理は、内陸で高地のカスティージャ地方名物料理の特徴のひとつでもある、こってりとした脂っこいもので、土地柄ゆえに特に狩の獲物の食材が多く、濃厚なワイン、羊のチーズ、数おおくの甘いものも出てきます。キホーテの料理は、現在でもラ・マンチャ地方では受け継がれて食されています。鹿の肉、いのしし、シャコの煮込み、アーモンドのクリーム、ドーナッツ、黄身のお菓子、エンピニョナードス(松の実のお菓子)、マサパン、マンテカード、トルタ、リコール漬けの蜂蜜スポンジケーキ。きっとドン・キホーテは気品高い騎士のように、口に含んでは味わいながら食したかもしれませんが、変わってサンチョ・パンサは、その美味しさにむしゃぶりついていたのかもしれません。

     

「ドンキホーテ」にも出てくる幾つかのラ・マンチャ地方中心の名物料理のレシピーを紹介します。 (このレシピーは、ここで紹介した本のものではありません。スペイン政府観光局のホームページから参照。)

 

第二メイン皿

Morterueloモルテルゥエロ

材料4人分

半身の野うさぎ。雌鳥の両腿。シャコまたはやまうずら1羽。生ハム250グラム。豚のレバー250グラム。厚めの三枚肉250グラム。田舎風フランスパン300グラム。オリーブオイル150cc。水2リットル。パプリカ(甘トウガラシの粉)大2匙。シナモンパウダー小1匙。挽きチョウジ(クローブ)小1さじ。ヒメウイキョウ(カルム) 小1さじ。塩とこしょう小1さじ。

大き目のシチュー鍋で雌鳥、ウズラを塩を加えてゆでます。あくをすくった後に野うさぎ、生ハム、レバー、三枚肉を加えて3時間煮込みます。スープだけ鍋に残し、雌鳥とウズラの皮と骨を除き、全ての具を包丁でひき肉状にします。大きなフライパンでパプリカをオリーブオイルと共に何秒かほど火を通してから、手早く鍋のスープを注ぎます。沸騰し始めたらパンをいれ5分間煮てからこま切れにされた肉を加え20分さらに弱火で煮込みます。その際鍋底にくっつかないように混ぜ続けることをお忘れなく。塩と胡椒で味加減を整えます。

 

第二メイン皿

TIZNAO ティスナオ

ジャガイモ2キロ。たら500グラム。干し赤ピーマン10個。にんにく1個(約10かけら)。パプリカ(辛くないトウガラシの粉)大匙2杯。玉葱10個。オリーブオイル。塩。

オーブンか、炭火か、フライパンでにんにく、たら、玉葱を焼く。ジャガイモの皮をむき適当な大きさに切り、塩を少々入れて煮てから水を切る。中火で暖めた土鍋にオリーブオイルをいれ、細切れにしたピーマンを炒める、そこへにゆでたジャガイモをいれる。その上に皮を取り除いたたら、玉葱とにんにくをのせ、パプリカと塩を振り掛け、1杯の水をかけて中火で10分間火にかける。土鍋のまま食卓へ運びます。

 

第一メイン皿

PISTO MANCHEGOラ・マンチャ地方のピスト

オリーブ・オイル100cc。ズッキーニ500グラム。大き目のなす1個(300グラム)大き目の緑の西洋ピーマン。玉葱1個。トマト3個。塩。

大き目のフライパンまたはシチュー土鍋でオリーブオイルを温め、弱火にしてからこま切りにしたピーマンをシナシナとなるまで10分いためます。火加減はそのままで、みじん切りの玉葱を加えいためた後、手ごろに輪切りされたズッキーニ、こま切れのなす、そして皮をむいた角切りトマトを入れます。

15分ほど弱火のままで煮込みます。トマトが煮込み過ぎないように注意。味見をしてから塩加減をします。火を消し、さめるまで蓋をしておきます。ピストは作った日でも又翌日でも美味しく召し上がれますし、又暖かいピストでも冷たいピストでも両方美味。

 

第一メイン皿

GACHAS ガッチャス

チョリソ2本。豚の三枚肉2切れ。にんにく2かけら。アルモルタ(レンリソウ属の一種)粉。オリーブオイル。塩。

チョリソと三枚肉をこま切れにする。にんにく、三枚肉、チョリソのこま切れをフライパンで炒める。別のフライパンか鍋で熱したオイルにアルモルタ粉を入れ、そして水を加えて、クリームソースを作リ、塩味を調節。そこに炒められた肉とチョリソを加える。作り立てが美味。アルモルタ粉の代用には小麦粉など。

 

第一メイン皿

MIGAS CON CHORIZO ミガス・コン・チョリソ

硬くなった前日のフランスパン3本。ロンガニサ腸詰め150グラム。固めのチョリソ100グラム。4かけらのにんにく。オリーブオイル。塩。

 あらかじめフランスパンをたたくか切るかして小さめに分けておく。そのパンを布の上において、少々の水をかけて布にくるみ3時間置く。丸のままの4かけらのにんにくをフライパンで狐色になるまで揚げ、フライパンから上げる。そのオイルに輪切りにしたロンガニサとチョリソソーセージを入れ炒め、そしてやわらかくなったパンを加える。全体によく混ざり、火が通るまでかき混ぜる。塩味を調節して、冷めないうちに食卓へ。

 

第二メイン皿

DUELOS Y QUEBRANTOS  デゥエロス・イ・ケブラントス 「決闘と減退」

卵。三枚肉のベーコン。生ハム。子羊の脳みそ。豚のラード。塩。こしょう。

生ハムとベーコンをコマギリにし、大き目のフライパンにて炒める、このときにオイルは使わず、ベーコンから出てくる油を利用。子羊の脳みそをゆでて、手ごろな大きさに切り豚のラードで炒める。卵をよくかき混ぜて塩コショウを加えて、生ハム、ベーコン、子羊の脳みその炒めたものと混ぜ合わせたスクランブル料理。食卓に運ぶときには、揚げた輪切りのフランスパンを添える。

 

第一メイン皿

GALIANOS O GAZPACHO MANCHEGO ガリナオス あるいは ガスパチョ マンチェゴ ラ・マンチャ地方のガスパチョ

シャコ1羽。リエブレ野ウサギ300グラム。雌鳥の肉300グラム。山あるいは野のウサギ200グラム。パン種を入れずに焼き上げた平たいパン2枚。パプリカ。塩。こしょう。

シチュー鍋でシャコ、リエブレ野うさぎ、山ウサギ、雌鳥を、肉が煮えるまで浸っている程度に水は多めにし3時間煮る。肉の骨を取り除き、細めに切り裂く。他の鍋にオリーブオイル、甘口パプリカを入れてから、前述のシチュー鍋の出汁を注ぎ、塩と胡椒を入れ、煮立つまで火にかける。煮えたところにこま切れにした平たいパンを入れ、20分煮込み、その時にパンがそこにつかないように5分ごとに注意しながら混ぜる。最後に細めに切り裂いた肉を入れてさらに5分間煮て、塩加減を見て食卓へ。

ガスパチョといえば、トマト・キュウリ・ピーマン・玉葱・にんにく・パン・酢・オイル・などの材料をミキサーにかけた冷たいスープ(アンダルシア地方のガスパッチョ)がとても有名ではありますが、このガスパッチョは吃驚デス。

 

第二メイン皿

Albóndigas ミートボール

材料4人分 牛ひき肉350グラム、豚のひき肉350グラム、玉葱1ッコ、にんにく一片、一切れの食パン、パセリ、スプーン大3さじの小麦粉、100ccの白ワイン。卵1個。オリーブオイル175cc。塩。タイム一枝。

玉葱、にんにくはみじん切りにし、フライパンに大匙2杯分のオリーブオイルで、まずはにんにくをいため、そこに半分の量のみじん切り玉葱を入れ、狐いろになるまで炒める。卵をとき、そこにひき肉、玉葱とにんにくを炒めたもの(オイルもです)、細かくちぎった食パン、みじん切りのパセリ、しお、こしょうを加えよくまぜ合わせます。手に粉をつけながら、ミートボールの形を整えます。フライパンでこれらのミートボールを表面が色づくまでオリーブオイルで揚げます、鍋にミートボールをあげて、フライパンにオリーブオイルを大2さじ位にし、残していた半分のみじん切りの玉葱を透明になるまで炒め、大2さじの小麦粉をいれ、手早く混ぜた後、白ワインを加えます。このソースを、ミートボールの入った鍋にいれ、100ccの水、タイムを加えて、ふたをし、弱火で約20分煮て出来上がり。

 

第二メイン皿

ATASCABURRASアタスカブーラス

ジャガイモ中8個。塩たら(塩抜き済)300グラム。にんにく3かけら。かたゆで卵4個。オリーブオイル大匙8-10杯。くるみ50グラム。

 

皮付きのままジャガイモを30分ゆでる。別の鍋でたらを5分ゆでる。たらのゆで汁カップ1杯を取っておきます。にんにくを刻み、ゆでたジャガイモの皮をむき、たらをほぐす。すり鉢でにんにくをつぶし、ジャガイモをいれ混ぜ合わす。たらを加えよく混ぜる。混ぜながらオリーブオイルを加えます。好みによって、たらのだし汁を加えて、やわらかくする。盛り付け鉢に入れ、かたゆで卵の輪切りとくるみを飾り、オリーブオイルを一かけする。

 

デザート

yema ジェマ 卵黄のお菓子

材料4人分 卵黄12個。砂糖180グラム。肉桂(シナモン)一枝。レモンの皮半個分。まぶし用粉砂糖100グラム。

 

片手鍋にスープ用スプーン10匙分の水、砂糖、レモンの皮、シナモンを入れ温め、混ぜながら弱火で加熱し続ける。シロップが出来上がったところで、火を止めシナモンとレモンの皮を取り除く。目の細かいこし器に通した黄身にシロップを加え、火にかけ混ぜてるうちに固まりつつ鍋から離れてくる瞬間に火を止める。このときに凝固しないように注意。鍋から皿に移して冷まし、こねてひも状にし粉砂糖をまぶし、24等分に切る。手で形を整え、好みで砂糖を更に加えたり、胡桃やドライフルーツなどを飾る。

 

デザート

Mazapán de toledo トレドのマサパン

材料 粉砂糖250グラム。粉状にひかれたアーモンド250グラム。卵一個。

卵白、粉アーモンド、粉砂糖をボールに入れ、均等に混ぜあうまでこねる。風通しの良い場所で12時間ほどペーストを寝かせる。粉砂糖をまぶしてこね直し、好きな形に整えて、表面に黄身を塗って、強火のオーブンで23分焼く。

この御菓子はクリスマスのお菓子として食卓に並びます。

 

 

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